豊岡アートアクション(TAA)は、2021年度から、「認知症は究極のコミュニケーション障害」であるという認識に立って、認知症の人と周囲の人との間のコミュニケーションを促進する、演劇的手法を用いたワークショップ・プログラムの開発を進めています。
認知症専門医、脳科学者、精神科医、演出家、俳優、ワークショップコーディネーター、市の看護師、社会福祉協議会職員等からなるチームを編成して作業にあたっています。
現時点では、これまでの検討を踏まえ、
①対象をアルツハイマー型認知症の初期の方とその家族の方を対象に絞ること、
②エピソードトークをベースにしたワークショップ・プログラムとすること、
③併せて認知症についての冊子を作成すること、
④ワークショップによる体感的・情動的経験と冊子による知的認識をセットにしたプログラムとすることとし、検討を進めています。

(「認知症コミュニケーション×演劇」ワークショップ・プログラム策定チーム 2023.7.2スタート)
これまでの検討経過
■2021年度
☆「介護×演劇」ワークショップ(「深さを持った演劇のまちづくりシンポジウム」の中のプログラムとして)
・日時 2022年1月22日(土)13:30~15:30
・会場 芸術文化観光専門職大学
・ファシリテーター:菅原直樹(「老いと演劇」OiBokkeShi主宰・俳優・介護福祉士)
・対象者:介護福祉関係者、専門職大学学生等
・参加者数 37名
主催:一般社団法人豊岡アートアクション
共催:兵庫県但馬県民局、豊岡市
後援:芸術文化観光専門職大学、豊岡市教育委員会
協力:文化観光高付加価値化リサーチチーム
■2022年度
☆「認知症×演劇」講演会
・日時 2022年10月16日(日)14:00~16:15
・会場 豊岡市民プラザ・ホットステージ
・内容
【講演1】「認知症世界の歩き方―認知症の方が見ている世界を知る」
講師 issue+design代表・慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特任教授 筧裕介
【講演2】「認知症演劇情動療法と演劇介護論について―医師の立場から」
講師 東北大学医学部臨床教授 藤井昌彦
【講演3】 「演劇情動療法と演劇介護論について―俳優の立場から」(30分)
講師 特定非営利活動法人二本演劇情動療法協会理事長・俳優 前田有作
【総合討論】
【講演会チラシの囲み記事】
ドイツでは、介護施設の近くにバスの来ないバス停を設置する動きが広がっています。
アルツハイマーの人が、「子どもが待っているので家に帰る」などと言って、施設を抜け出してしまうことがしばしばあります。
その人たちにある顕著な特徴があることに、施設のスタッフが気づきました。公共交通機関を使って帰ろうとする傾向です。公共交通機関を使っていた記憶が蘇ったのだろうと考えられます。
スタッフは、施設の近くにバス停の看板を立てました。
「家に帰る」と言う人に、「すぐ近くにバス停がありますよ」と誘う。安心してバスを待つ施設利用者。
もちろん、バスは来ません。
しかし、そのうちに、その人はなぜバスに乗ろうとしているのかを忘れてしまいます。
頃合を見て、スタッフが「中で待ちましょう」と声をかけ、施設に誘います。穏やかに帰る施設利用者。
その繰り返し。
「優しい嘘」、あるいは「罪のない嘘」と呼ばれているそうです。
これも、演劇的介護なのだろうと思います。バス停の設置は、演劇の舞台設営と言っていいかもしれません。

☆SDG岩佐賞(福祉部門)受賞
公益財団法人岩佐教育文化財団が募集する「SDGs岩佐賞」に「認知症×演劇」で応募し、福祉部門で受賞。2022年10月22日発表

☆「認知症コミュニケーション×演劇」ワークショップ
・日時 2023年3月11日(土)13:00~16:30
・会場 芸術文化観光専門職大学
・内容
【ワークショップ】
ファシリテーター 菅原直樹(「老いと演劇」OiBokkeShi主宰)
参加者 32人
【座談会】
登壇者 菅原直樹、河村竜也(芸術文化観光専門職大学)、守本陽一(医師・ケアと暮らしの編集者代表)、中貝宗治(TAA理事長)
参加者 15人


■2023年度
☆認知症講演会
・日時 2023年7月2日(日)14:00~15:30
・会場 豊岡稽古堂3階(豊岡市役所)
・内容
講師:恩蔵絢子
テーマ:「脳科学から認知症を考える―なぜ認知症の人は家に帰りたがるのか」
・参加者:約110人


☆「認知症コミュニケーション×演劇」ワークショップ・プログラム策定チームスタート(記者発表)
・日時 2023年7月2日(日)(恩蔵さん講演会の後)
・記者発表資料→こちらから
☆ワークショップ・トライアル
・日時 2023年8月2日(水)16:00~18:00
・会場 豊岡地区コミュニティセンター
・内容 恩蔵絢子さんの母との記憶を基に、芸術文化観光専門職大学生を対象にエピソードトー・ワークショップを実施(策定チーム)。
☆公開ワーククショップ&座談会
・日時 2023年11月15日(日)14:00~16:00
・会場 じばさん但馬多目的ホール
・内容
「老いと演劇」公開ワークショップ
ドキュメンタリー映像「演じて看る」上映
座談会「認知症コミュニケーション×演劇」
・参加者 60人



【講演会チラシの囲み記事】
「認知症コミュニケーション×演劇」の可能性を探る
豊岡アートアクション理事長 中貝宗治
2025年には65歳以上の人口の約20%が認知症を有する状況になると推定されています。地域や家庭の中で認知症の人とそうでない人がどのように向き合い、共に生きていくのかが大きな課題となっています。
認知症は、「何も分からなくなる」「分からないこと自体も分からなくなる」というイメージがありますが、そうではありません。
専門家は、認知症の人も周囲の反応が分かっていると言っています。
認知症は究極のコミュニケーション障害であり、自分が理解されないばかりか、怒られ、ダメ出しされることにショックを受け、どんどん落ち込んでゆく、とも。
コミュニケーションは双方向、キャッチボールです。そのキャッチボールがうまくいかない。
その苛立ちや居場所のなさから、「攻撃性」や「徘徊」といった行動心理症状(周辺症状)が現れると言われています。そして、「記憶障害」「判断力障害」などの中核症状は治らないのに対して、行動心理症状(周辺症状)は、人間関係によって緩和できる、とも指摘されています。
もし私たちが、問題はコミュニケーションだと気づき、想像力を働かせてその人が見ている世界をイメージし、理解し、否定せずにその世界に寄り添っていくことができれば、認知症の人とそうでない人との関係をより良いものにできるはずです。
既に豊岡では、小、中、高等学校の授業において、児童生徒は、コミュニケーション能力の向上を目的とした演劇ワークショップを受けています。
演劇は、他者を演じることで、他者への想像力を育みます。
同様に、演劇的手法を活用した、認知症の人と家族等介護者のためのコミュニケーション・ワークショップのプログラムができるのではないか、と私たちは考えています。
今、豊岡アートアクションは、そのワークショップ・プログラムの定作業を進めています。
策定チームは、認知症専門医、精神科医、脳科学者、演出家、俳優、地域コミュニティ関係者等で構成するチームで進めています。豊岡市健康福祉部と豊岡市社会福祉協議会にもオブザーバーとして参加を得ています。
今回、その可能性を探る取組みの一環として、「菅原直樹公開ワークショップ+ドキュメンタリー映像+座談会」:を実施することにしました。
皆さん、ぜひご参加ください。
☆認知症レクチャー
・日時 2024年1月29日(月)13:00~14:00
・場所 ちば内科・脳神経内科クリニック
・内容 認知症専門医・千葉義幸医師から認知症についてのレクチャー(策定チーム)
■2024年度
☆認知症講演会
・日時 2025年3月2日(日)13:30~15:30
・会場 五荘地区コミュニティセンター
・内容
講師:恩蔵絢子
テーマ:「認知症と診断されたときに、脳科学者が伝えたいこと―その人らしさは変わらない」
・参加者:135人



☆認証冊子の作成(2025年3月2日完成)
「『アルツハイマー型認知症』と診断された方に、今伝えたいこと」と「『アルツハイマー型認知症』と診断された方のご家族に、今伝えたいこと」を作成・配布
著者:脳科学者・恩蔵絢子氏 作成部数:各350冊
配布先:豊岡病院精神科(各20冊)、豊岡市社会福祉協議会(各20冊)、豊岡市健康福祉部(各45冊)、養父市健康福祉部(各20冊)、朝来市健康福祉部(各20冊)、香美町福祉課(各20冊)、新温泉町福祉課(各20冊)、但馬長寿の郷(各20冊)、一般社団法人ちいきのて(各40冊)、恩蔵さん講演会参加者(各100冊) 合計650冊

「認知症コミュニケーション×演劇」WSP策定チーム
| 役職 | 所属 | |
| 中貝 宗治 | 総括 | 豊岡アートアクション(TAA)理事長 |
| 平田 知之 | プログラム制作チーム・リーダー | 芸術文化観光専門職大学(CAT)講師 |
| 村井 まどか | プログラム制作チーム | 江原河畔劇場代表・劇団青年団俳優 |
| 小林 遼 | プログラム制作チーム | 慶応大学・精神科医・劇団青年団演出部 |
| 田野 邦彦 | プログラム制作チーム | 演出家・劇団青年団・演出部 |
| 守本 陽一 | ヒヤリングチーム・リーダー | だいかい文庫館長・医師 |
| 青柳 順子 | ヒヤリングチーム | ちいきのて代表 |
| 千葉 義幸 | 監修 | ちば内科・脳神経内科クリニック院長 |
| 恩蔵 絢子 | アドバイザー | 東京大学大学院総合文化研究 科特任研究員 |
| 林 恭子 | オブザーバー | 豊岡市健康福祉部高年介護課・保健師 |
| 田中 正義 | オブザーバー | 豊岡市社会福祉協議会事務局長 |
| 石黒 直紀 | 事務局 | 豊岡アートアクション(TAA)事務局長 |